古代甲州を探して
旧街道サイクリングファンの皆様こんにちは! フナズシマルです。
今回は9月に走ってきた甲州街道の3日目、山梨県・石和宿から静岡県・与瀬宿までの様子をお届けいたします。
石和健康ランドの朝。
温泉施設なのでちょっと早起きしてひとっ風呂。スッキリとしたら朝食タイムです。
Y農場長念願のホテルの朝食バイキング…。(バイキングといっても一皿ずつラップで包まれた小皿を取っていくスタイル。ビニール手袋も配布されておりコロナ対策はバッチリとされていました)
食堂に行ったのですが、その時点ではY農場長はいませんでした。
昨晩に出発時間(8時30分)は伝えてあるので、そのうち来るだろうと思い、先に一人で食べ始めます。
食事も終わり部屋に戻ろうとすると、向こうから浴衣姿のY工場長…
は? まさか、今から…?
あんなに熱望していた朝風呂と朝食バイキング、この時間からだとゆっくりできないのになあ…、
そう思って一人準備を整えホテルの外で待っていると、出発時間から30分ほど経過した後、まるで大物芸能人かと思うくらい堂々と現れたY農場長。
「いやー、良かったね! 最高だ。時間通りに出てこれましたわ!」
おいこら!確信犯じゃねーか!
ということでいきなり30分のビハインド。
この日の走行距離としては70km程度なのですが、この旅はじめての自転車担ぎの難所を迎えるコースなんです。だから時間がかかってしまうというのに…
とは言え、こんなのもいつものこと。気を揉んでも仕方なし。
さて昨晩ワイン試飲の際に、ソムリエの方が仰っていた「古代甲州」という樹齢100年を超えるブドウの樹を見たくなり、その樹があると思われる大和葡萄酒(株)さんに向かいます。
勝沼に来たらブドウとワイン!
この辺りまで来ると道の両側には葡萄畑が広がり、勝沼エリアに入ったのだとわかります。ほのかにブドウの甘酸っぱい香りが漂います。
大和葡萄酒(株)さんに着きました。
周囲をいろいろ見て回ったのですが、古代甲州らしき樹は見当たりません。敷地内におられた方に聞いてみましたが知らないとのこと。
誰か知る人はいないものかと敷地内のお宅の呼び鈴を鳴らして待っていると、こちらのお母様だと思われる高齢の女性が出てきてくださいました。
「古代甲州の樹を探しているのですが、こちらにあると聞いたのですがご存知ですか?」と私。
「あ〜、聞いたことないねえ…。息子らなら知っているかもしれんけど、わたしゃようわかりませんので…。」とお母様。
いえいえ、わざわざ出ていただきありがとうございました。というかスミマセン…。
(なんか申し訳なくて、あとで大和葡萄酒様のワインをお土産に買うことにしました。)
ぶどうの丘
甲州街道はこの日本産ワインの一大産地・勝沼を通り抜けていきます。もちろん寄り道しない手はありません。
左手に広がる一面の葡萄畑の丘陵地の先に、「甲州市勝沼ぶどうの丘」という施設があります。ここへ寄ってお土産を買おうという計画をしていました。
ちなみに私があっちこっちと引っ張り回し、Y農場長はただただ付いていく…、それがヤジキタの旅の基本スタイル…。
「次どこ行くんだ?」とY農場長。
「次は勝沼のぶどうの丘に行きますよ! で、ワイン買おうかと思って。」
私は、これでてっきりY農場長には行き先が伝わっていると思っていたのです。
ところが…。
葡萄畑の間を通り抜け、交差点をぶどうの丘の看板が指し示す右手の道へ。ここからは上り区間です。マイペースで登る私。徐々に遅れるY農場長…。
ただ看板もあるし、一本道なので迷うことはないはず。
途中、後ろを振り返りながら進みますが、かなり後ろに置いてきてしまった感じです。
まあ大丈夫だろうと、そのまま進むうちにぶどうの丘まで辿り着きました。
10分程待ってみましたが、なかなかY農場長は登って来ません。
ん?おかしい…
「今どこですか?」スマホでメッセージを送ってみます。
すると、「なんてところに行ったらいいんだ?」と返信あり。
………?
どういうこと? ぶどうの丘に行くって言ったはずなのに。
「あれ?ぶどうの丘ですよ。スマホで調べれば出てきますって!」って返信。
すると、
「ぶどうの丘って言うけど、周り全部ぶどうの丘だろうが!調べてもぶどうの丘だらけだ!」
と若干イラつき気味の返信が…
あ…、そういうことね。
私は「甲州市勝沼ぶどうの丘」という施設名のつもりでぶどうの丘と説明したつもりでしたが、Y農場長は施設名だとは思わず、このエリアのことを表すぶどうの丘として認識してしまったようです。
Y農場長にとっては、目の前はひたすらぶどうの丘だらけです。
で、勝沼の丘陵地に広がる広大なぶどうの丘のどこに行けばいいのか分からず、「甲州市勝沼ぶどうの丘」を通り過ぎ、さらに上の方まで頑張って登り続けたようで…。
その後無事再会できましたが、若干怒り気味のY農場長はぶどうの丘から見える絶景にもあまり感動せず。(もっとも景色に興味ないのは元からですが…)
「ワシはもっと高いところからもっといい景色みたからな!」と捨て台詞…
まさかの勘違いでした。
農場長センサー
気を取り直して、せっかくなのでぶどう園でぶどうでも食べたいよなという話になり、街道に戻りつつぶどう園をみて回ります。
たくさんぶどう園はありますが、さすがどこもシャインマスカットは高い!
一房1500円〜2000円なんて当たり前。
ここでY農場長の能力がまたまた発揮されました!
「ワシはここが気になる!」と言って、おもむろに向かっていたとある直売所。
シャインマスカットも置いてあります。
ところが値札を見ると全然安い!
とりあえず一房買って二人で食べようとなりました。
で、ぶどうを見ていると、店のお母さんが「試食してみて!」とシャインマスカットを始め、色んな種類のぶどうを沢山持ってきてくださいました。
気がつけばぶどうでお腹がいっぱいになるほど。
さすが農産物になると超人的なセンサーを持つY農場長。やはり農場長の名は伊達ではありません!
Y農場長、すっかりご機嫌に。
ちなみに石和から勝沼までたった10km弱。
そもそも出発が遅かったのに勝沼で色々あってすでにお昼になってしまいました。まだあと峠2つを含む60kmを残している状況。こりゃ今日は相当遅くなるな…。
ぶどうでお腹いっぱいになっているのでランチは食べず、その分先に進むことにしました。
ついに難所「笹子峠」へ!
勝沼を過ぎると今回の旅で最初の難所となる「笹子峠」を迎えます。
笹子と聞くと2012年に痛ましい事故のあった中央道・笹子トンネルですが、そのトンネルはこの山を貫いています。
勝沼を越えてからは、じわりじわりと登りが始まりました。
景色もすっかり険しい峡谷の雰囲気に。
鶴瀬宿を越えたあたりで国道から右手の旧道へ向かうと、勾配はさらにきつくなり…
そして駒飼宿の手前では、ひっくり返るんじゃないかと思うくらいの坂が現れました!
駒飼宿の場所自体も完全に斜面です。
汗が止まらず、かなりキツイ…
まあ、2日間ろくに難所もなく食って飲んでばかりだったので、このくらいの場面はむしろ必要でしょう。
しばらく、つづら折の旧道を進んでいくと…、
ついに現れた真の旧街道!
昔のままの未舗装の山道。
自転車を降り、歩いて越える峠道の始まりです。
いざ進み始めると、時たま案内表示はあるものの道が非常にわかりづらい。
ほぼケモノ道と言っても良いくらい。微かな踏み跡による地面の違いを頼りに進みます。
果たして道があっているのかどうかもわかりません。
時間が押していることもあるので、もし山で迷うことがあったらまじヤバイ…。
少々ビビりながら歩いていたところ少し先に林道らしきものが見えたので、そちらへ出ることにしました。だって山で遭難している場合ではないので。
と思ったらちゃんと甲州街道の看板が立っていました。
ここは山道に慣れてない人だと間違いなく進む方向を見失うと思います。違った意味での難所でもありました。
本当はこの先も旧道は続くのですが、時間のこともあり笹子隧道を進むことに。
歩けばまだ30分はかかりますが、隧道なら一瞬。
ところがY農場長、この日は朝からお腹の調子が…
「ワシ、ちょっと…」と茂みの奥へとしばし入っていかれます。
そういえば昨日からお腹が緩くなっているみたいでトイレに頻繁に行ってたような…。
どうも先日の生プルーンのデトックス効果?が発揮されていたようです。農場長、やはり農産物には体も敏感なのでしょうね。
難所続きの3日目
笹子峠を切り抜け気持ちの良い下りを堪能し、再び国道20号へ。
黒野田宿のあたりを通り過ぎ、JR笹子駅前の少し建物が増えたところに「笹子餅 みどりや」がありました。軽快な下り区間でしたが峠を一つ越えたこともあり、笹子餅で補給タイムです。
笹子餅は、よもぎの風味ともちもちした食感が素朴で美味しいお餅でした。
元は笹子峠の矢立ての杉あたりで販売されていた峠の力餅だったそうですが、鉄道開通で峠を歩く人が減った後特別に鉄道での販売を承認され、それ以来「笹子餅」として笹子の名物になったとあります。旧街道を走ってるとそういった交通事情の変遷による市場の変化など勉強になります。
笹子峠を出てからは、しばらくは国道20号をゆっくりと下りながら進みます。
お陰で思ったより時間を短縮出来そう…。
ただ国道なので頻繁に横を追い越していくトラックが怖い。マジで轢いても構わないと思ってんじゃないかと思うくらいギリギリを攻めて来ることも。
国道のような場所は彼らにとっては仕事場であることはわかるし、彼らにとって我らは仕事の邪魔をしてる存在なのだと言うことは理解してるけど、轢いてしまったらあっちは犯罪者だし、こっちも痛いし(痛いで済んだら良いけど…)、誰も幸せになりませんよね。
ネット通販等で、運送業界に負担をかけてたりするのは自分達だったりする…。なかなか簡単な話ではないな、なんて思いながらヒヤヒヤしながら進みます。
場末の飲み屋街のような雰囲気の大月駅前を通り過ぎ、旧道は国道20号と度々交差して進みます。
この辺りは花咲宿、大月宿、駒橋宿、猿橋宿と短い間隔で次々と宿場が続いていました。
実は甲州街道にはこう言ったところがいくつか見受けられます。それぞれ独立した宿場と言うよりも、そのエリア一帯の宿場機能を複数の集落が分担しあっていたようですね。
国道を走ってたらわからなかったのですが、このあたりって結構な渓谷エリアだったみたい。
大月市を越えると、いよいよ本日最後の試練「犬目峠」にさしかかります。
ただ時間的にもう日暮れが近くなってきていました。今から峠と言うのは正直行くべきか迷うところ…。このまま国道を進めば最短距離で宿へ向かえます。さてどうすべきか?
「峠ありますけど、遅くなりそうなので国道いきますか?」とY農場長に聞くと、
「アホ言うな!峠行くに決まってんだろ!」とアッサリ。
心の中ではY農場長が峠に行かないって言うのを密かに期待していたのですが…。私の方が軟弱者でした。
犬目峠は結構キツイ登り。
本当にこの時ばかりは国道でええやん!って思うくらい…。
薄暗くなるなか必死で登っていきます。
葛飾北斎の富嶽三十六景に「甲州犬目峠」と言う絵があります。実は犬目峠に来たらその絵と同じ景色が見たいと思っていました。犬目宿に着いて、相変わらず農産物以外に興味のないY農場長にちょっと待ってもらいつつ、富嶽三十六景の絶景ポイントを探します。
どうやら犬目宿入り口にある宝勝寺の境内がその場所と言うことで行ってみたのですが、この日の空は薄曇りとなっていて、結局富士山は姿を見せてくれず…
(ただ確かに慈母観音像の所には富士山が見えると書いてはありましたが。)
富士の絶景は諦めて犬目集落の公民館まで戻ると、Y農場長は何故か集落の子供達と絶賛お遊戯中…。ほんの数分の間にまるで子供達のお父さんみたいに懐かれています。
おそらく普段集落の人以外目にする事のないここの子供達にとっては、Y農場長は珍しい人種だったのでしょうね…
子供達に惜しまれつつ、犬目宿を後に。
ここは中央道の談合坂付近。
眼下の高速道路を見ると連休ということもあるのか、恐ろしく渋滞しています。
ここからはまさに釣瓶落とし。日没時間を過ぎると一気に暗くなります。
犬目峠にも石畳の道などもあったのですが流石にそんな余裕はありません。とにかく真っ暗になる前に峠を抜けたい。
上野原宿で再び国道20号と合流。もうすでに真っ暗。
高速の渋滞の影響なのか、国道も大渋滞していました。こうなると下手に真っ暗な旧道をいくよりも車のライトで明るい国道を進んだ方が良いと判断し、この先は渋滞する車の横をすり抜けながら相模湖まで一気に進むことに。
吉野宿あたりからは相模湖の湖畔沿いに国道は進むのですが、真っ暗で何も見えません。
途中道を若干間違えつつ、19時過ぎたくらいにようやく宿に到着。宿場名は「与瀬宿」。JR相模湖駅前の相模湖観光の中心地です。
今晩は駅前からすぐの民宿「桂月」さんにお世話になりました。
「桂月」さんは普段、東京方面の大学ボート部などを受け入れている合宿所のような所です。この日は我らの他には宿泊客はあまりいない様子。大学生の合宿もこのコロナ禍ではできないのでしょう。素泊まりにしては高めではあるけど、我らが利用することで少しでも足しになれば良いなと思います。
相模湖駅前と言っても食事場所などは少なく、一軒あったファミレスは渋滞のせいなのか大混雑。この日は仕方なくコンビニで買って宿で食べることにしました。
さあ、いよいよ翌日は最終日。天気も最後まで大丈夫そうです。
GoproMAXで撮影したダイジェスト動画
甲州街道マップはこちら
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