台風がくれた人の温かさ…
ということで、
今ここである。
皆さまのアドバイスもありホテルは連泊に。この日はツール※みたく完全休養日となった。
朝から濡れた衣類の洗濯、自転車の掃除、靴の乾燥なんかをしている間、テレビはひたすら台風情報を流し続けている。四国に上陸はする可能性は高かったが、まさかの宇和島の真上を通過するルートとなる台風イチマル号。本当に私に合わせてくれているかのようで、なぜか愛着を感じてしまう…。(被害に会われている方もいる中大変不謹慎とは思いつつ…)
※ツール…ツールドフランスやジロデイタリアのような自転車のステージレースのこと。15日以上のステージに2日の休養日が設定される。
とは言いつつ、ここ宇和島はありとあらゆる警報の大売出し状態。1200㎜の降水量ともニュースで流れる中、気になるのはあの❝ダム❞。
ニュースで動向に目を光らせつつ、スマホの画面は「須賀川ダム」のダム情報を表示させている。ダムの水位と放水量の時間経過がリアルタイムで見れるのだ。深夜から降り続く雨、相当に水位が高いのかと思いきや、さほどではなさそう。その分放水量の線は急激な右肩上がりを描いている。現在頑張って放水中のようだ。琵琶湖もそうだけど、ダムとかの放水量の調節の仕事って大変な仕事だなと思う。天気を予測して事前に水量を減らしたり、大雨の時はダムが溢れないようにしつつも、流しすぎて河川流域が水浸しにならないようにもしないといけない。おそらく台風が迫るここ数日は夜を徹しての管理がされているのだろうな。頭が下がる思いだ。須賀川ダム管理事務所の皆様、どうかよろしくお願いします。
最近、会社の休日も色々イベント参加や自転車の活動、それに家族との時間と意外とヒマな時間がほとんどなかった。ある意味軟禁状態であるこの日は、久々の❝何もない日❞だ。嫁からラインで、「時間あるんだったら、ブログでも書いたら?」って来た。ああそうだな、って午前中はシコイチ1日目の記事を、もうすっかり飽きてきた台風ニュースを流しながら書いていた。
そうこうしていたら、正午になった。
ふと雨が止み、雲の隙間に青空が覗く。
1階ロビーで無料のコーヒーを飲みながら空を眺めていると、ホテルで避難していた人の数組がチェックアウトしていった。皆さん、もう大丈夫と言うことなんだろうか…
その中の一人に、前日出会った老夫婦の奥様が。旦那さんは駐車場へ車を取りに行っているようだ。目が合って、こちらへ話しかけてくださる。もう大丈夫そうだから自宅へ帰るそうだ。と言っても、今台風は真上なんだが…。お気をつけて、と送り出そうとすると、駐車場から戻ってきた旦那さんに何かを話した後、
「もうお会いすることはないだろうけど、せっかくのご縁だからこれを…」といって何かが入った封筒を、私の手に握らせてくれた。
「えっ!何ですかこれ? こんなの貰えないですよ…だってちょっとお話しただけの人間ですよ。」と言うと、
「こういうものは断るものではないの。受け取って!」と強い口調で言われたので、仕方なく受け取ることに。
その場でお二人に何度もお礼を言い、ホテルの外で最後まで見送った。
どうもこれは、お遍路さんへの「お接待」というものなのだとわかった。お接待とは、元はお弘法大使の化身として四国を巡るお遍路さんへのお賽銭という意味がある。また昔はコンビニや自販機もないような道を何キロも歩くという行為に対する施しの文化なのだそうだ。なので施しを受けた場合は断ってはいけないという暗黙のルールがある。おそらくあの老夫婦は四国一周をしている私の話を聞いて、「お接待」してくれたのだ。人の好意におもわず久々に目頭が熱くなってしまった…。シコイチは、そんな四国の歴史や文化に根付いた温かみを感じることができる。それは四国ならではのことであり、他の地域に簡単に取り入れることはできないものであろう。
さつま
私もこの台風の目が通過中の間に、外の空気を吸いに出てみた。昨日の夕方からコンビニ飯つづきなので、そろそろ飽きてきたところだ。
ホテルから歩いてすぐのところに、「かどや駅前本店」というお店があった。店頭のメニューには宇和島鯛めしと「さつま汁」とある。鯛めしと並ぶ有名な郷土料理である「さつま汁」を食べてみようとお店に入った。
さすがにこんな天気だから、お客は私と出張中のサラリーマングループと思われる2テーブルのみ。待つこと10分ほどで運ばれてきた。
「さつま汁」とは白身の魚(主に鯛)を麦味噌と一緒にすり潰し、鯛のアラなどでとっただしで伸ばした冷や汁だ。
薬味にミカンの皮を入れるのだが、これが愛媛県らしくていい。
お櫃には約2杯分のご飯が入っていて、これをお茶碗にいれ「さつま汁」をかけて食べる。こじゃれたお膳で出てきているものの、本来は鯛めし以上に昔からの宇和島の家庭の味なんだろう。しかし、麦味噌のあっさりとした塩加減とコク、そこにフワッと香るミカンの風味とほろ苦さがご飯に纏わり、ガッツガッツと口の中へ掻っ込める! 旨い! お櫃のご飯では足りないくらいだが、さつま汁も足りない。今度は自分で作って思いっきり食べてみたい。そんな気分にさせるものだった。
ちなみに「さつま汁」、単に「さつま」とか「伊予さつま」とか呼ばれており、さつまと聞くとあの「薩摩」・鹿児島との関連を考えてしまう。調べてみると諸説あるようで、やはり薩摩の国から伝わったという説や、ご飯にかける際に汁のなじみを良くするため、十字にご飯にスジを入れる様が島津家の家紋のようだからとか…。 漢字で書く場合、実は「佐妻」と書いたりするのだが、これは昭和天皇が「妻を佐(たす)ける」料理として名付けたそうで、宇和島では男の料理だったのかもしれない。
イチマル号との別れ
かどやさんを出る頃には、再び雨が降ってきた。すでに台風の目も通り過ぎてしまったようだ。すっかり忘れていたが、まだ巨大な台風の真下という状況は変わっていない。
風も強さを取り戻してきたようだ。台風イチマル号よ、ここまでお付き合いありがとう。今回なんだかんだ様々な経験や出会いを与えてくれ、印象的な旅になったのはイチマル号の存在が大きかった。でも、そろそろお別れだ。大きな被害が出る前に立ち去ってほしいのだ。
ダムの水位も安定している。このままいけば明日は予定通り今治へ向け出発できるだろう。
まだまだ予断は許さない。けれど気持ちではすでに、高松のゴールを捕らえていた。
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