酒米と食用米
日本酒ってお米からできているのは皆さんご存知だと思います。(当たり前ですよね・・・)
でも(どんなお米か?)ってことまでご存知の方は少ないのではないでしょうか?
有名なところでお酒のラベルに「山田錦」って書かれたものはよく目にすると思いますが、「山田錦」というのが使われているお米の品種です。
でもこの「山田錦」、スーパーのお米売り場には売っていません。
実はお酒で使うお米と、普段食べるお米とは品種が大きく違うのです。
スーパーでよく見る「コシヒカリ」や「あきたこまち」等は【食用米】というカテゴリー、
対して「山田錦」や「五百万石」は【酒造好適米】と呼ばれるものです。
一般の家庭で消費されるお米ではないので、スーパーには売っていないのですね。
ちなみにどんなお米でも日本酒を作ることは可能です。
ではなぜ、【食用米】と【酒造好適米】の違いがあるのでしょうか?
次の図を見てください。
左が【食用米】、右が【酒造好適米】です。左の方が粒が大きく、かつ『心白』と言われる部分が大きいのがわかると思います。
外側のグレー部分が食べたときにモッチリとした食感を生む性質があり、たんぱく質や脂質が多いと言われる部分です。対して『心白』は隙間が多くデンプンが多い構造のため白く不透明となっています。
なぜ酒造好適米がお酒造りに適しているのかというと、この『心白』が大きいからにほかなりません。お酒はお米に麹菌を繁殖させて、麹米を作るところから始まります。
「「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」というほど、お酒造りの工程において麹づくりが非常に重要なものなのです。
その麹菌がうまくお米に入り込んで繁殖しやすいかどうかは、心白の大きさに関わってきます。隙間の多いこの構造が麹菌の繁殖と、その後「醪(もろみ)」になってからの溶けやすさにつながっているのです。逆に外側はたんぱく質が多く固いため、お酒では雑味につながってしまいます。そのため大吟醸などのお酒では可能な限り外側を削っていいところだけを使おうとしているのですね。精米歩合〇〇%といった数字がそれです。
逆に言えば酒造好適米はスカスカな部分が多くモッチリした外側が少ないので、食用としてはパサパサになりがちで美味しくないと言われています。
以上、酒米と食用米の違いでした!
コシヒカリのお酒、「神開 特別栽培米 一粒一善」
とまあ、酒造好適米がいかにお酒造りに適しているのかを説明したうえで今回紹介するのは、なんと食用米の王様「こしひかり」のお酒!
神開 特別栽培米 『一粒一善』
甲賀市 水口:藤本酒造
滋賀県産の減農薬・減化学肥料で特別に栽培された「こしひかり」を70%まで磨いて醸されたお酒です。
先ほどの酒造好適米の話からすると、食用米の王様「こしひかり」とは言え、逆にそれが一番気がかりになってしまいます。
食べて美味しいお米のNo.1ってことは、たんぱく質や脂質が多くモッチリとしたお米ってことですよね?ということは、雑味につながる成分が多いってことになってしまいます。
しかも精米歩合70%じゃあ、酒米だったとしても決して高い精米歩合ではありません。(まあ、あまり磨いたところで心白も小さいため意味ないのですが・・・)
ではどんな味だったのか・・・・
あくまでの個人の感覚なので人によって違いますが、
口に含んだ瞬間は、フワッとやわらかい呑口。切れはそんなに感じないかな。
でもいやな雑味や、へんな酸味もありません。言われなければまったくお米の違いはわからないのではないかと・・・今回のお酒は火入れでしたが、普段生酒しか飲まないウチの嫁もグビグビ飲んでました・・・( ;∀;)
冷酒で飲むとバランスが良くてクセがなく、ふわーっと喉の奥に落ちていく感じ。でも、なんとなく冷酒より熱燗が合いそう・・・なので熱燗にしてみました。
が、これが大正解!
冷酒だとあまり主張がなさすぎるくらいでしたが、熱燗にしたとたん「これぞ滋賀の地酒!」といった骨太な旨みがガツンと顔を出しました。旨みとその後にぐうッと押し出すフルーツのような酸味。こりゃ旨い‼
食用米と酒米の違いを勉強したことで、変な先入観と興味本位で買ってみたこのお酒・・・
おそらく食用米だけに美味しく作るには相当な努力や工夫が重ねられているに違いありません。そんな蔵人の方々の並々ならぬ技術力が生んだ酒造りに思いを馳せながら、また一杯頂きます。
地の酒を頂くこと、それは造りて(酒造り・米造り)の方々のそんな思いを頂くことかと・・・。日本酒はシンプルなようで大変複雑な飲み物、そんな造りの意味を知れば知るほど深みにハマっていきますよ。
※酒造好適米は、あくまでも一般的には麹米を作る際の高精白に適した米というものであり、食用米(うるち米)はダメというわけではありません。実際に掛け米には通常うるち米が使用されることのほうが多いようですし、普通酒は麹米もうるち米となる場合が従来は多かったみたいです。今回の資料や記事内容についてはこのお酒の特徴をわかりやすくするため、酒米の違いに着目して強調しています。
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